獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢
「していません! ……けれど、私がどんなに否定しても、聞いてもらえる状況ではありませんでした。彼女は美しい聖女で、私の婚約者も特別視して心酔していました。何を言っても言い逃れだと思われてしまい、犯人にされてしまったのです」

 彼女に恋をしているフレデリックには、操作があってもなくても、私が何を言おうが同じことだった。

 『あの清らかなフロレンティーナが、そんなことをするはずがない。おかしいのは彼女を嫌うブライスだ』

 誤解だった。すべて、誤解だったけれど、誰も私の言葉を信じてくれなかった。

 婚約者……ああ。元婚約者の、フレデリックさえも。

「おい。冤罪だとわかっていながらも、逃げるのか? どういうことだ。通常であれば濡れ衣を晴らす方向だろう。簡潔に説明しろ」

 理解し切れない状況に苛立ったのか、ヴィルフリートに鋭く睨まれて、私はふうっと息をついた。

 こうなったら、彼に話してしまおう、すべてを。

 国外へと逃れてしまえば、彼とはもう二度と会う事もない。フロレンティーナへ恋する予定の彼に『彼女の真実』を教えること。

 これは……彼女への復讐になってしまうのだろうか。
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