獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢
 あ。気が付けば、さっきまで居た竜たちの姿はなく、扉は完全に閉まっていた。

「ヴィルフリート。その……ありがとう……私一人だと、絶対にこれは、出来ないことだった」

 こらえられないくらい涙があふれて来たので、ヴィルフリートはハンカチを出して私の頬を拭ってくれた。

「時間が掛かって悪かったよ……こうした貴族たちが集まる夜会に聖竜を持ち込むとなると、色々根回しが要るんだよ。とにかく、役所関係の許可まわりが、時間が掛かった。王太子がこっちの味方でないと、難しかったなー」

 王太子であるオルランド殿下がいろいろと便宜を図ってくれたから、こんな無茶なことも出来てしまったらしい。

 もういろいろと驚き過ぎて興奮も醒めやらないけれど……私はもう、フロレンティーナに脅かされることは、二度とないんだわ。

「すっきりしたか?」

 ヴィルフリートの問いかける声は、優しかった。

 ……ううん。ヴィルフリートはいつも優しかった。厳しい言葉を掛けて来た時も、裏返せば心配してくれていたからだった。

「はい」

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