獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢
 これまでにあった数多くの悪い出来事が頭をよぎり、背筋がゾクリとしてしまった私は、自分自身を抱きしめるように腕に手を回した。

 ええ。ええ。そうよ。これで、良かったのよ。

 本来、貴族令嬢ならば、死刑宣告に等しい婚約破棄だったとしても……あの人から、あの底の見えない闇のような黒い感情から、逃れられるなら。

「オーキッド……? ああ。オーキッド公爵家の……いやいや、待て。婚約破棄を、されただと? 婚約解消ならばまだしも、破棄はそうそう聞く話でもない。婚約破棄の理由は一体、何だ。貴族令嬢にとって致命的で、あまりにも非道。いい加減、詳しくさっさと話せよ」

 圧の強い青い瞳で見つめられ、私はひくっと怯んだ。

 『恋愛ゲームなんて、聖女の私には簡単です!』略して『れんかん』の悪役令嬢……つまり、私ことブライス・ルブランは、物語中盤でフレデリック・オーキッドから婚約破棄をされることが役割だった。

 真っ直ぐな長い黒髪にまるで血の色にも似た深紅の瞳、けれど、姿は美しく妖しい魅力を醸し出す悪役令嬢らしい貴族令嬢。

 それが、私。ブライス・ルブラン。

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