【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?
「そもそも、アンジュが先に僕のことを助けてくれたんだ。だから『お世話になった』だなんて考えなくていいんだよ」

「だけど、その後倒れて、かえって看病の手間を掛けてしまいましたし」

「アンジュがいなかったら僕は死んでいた。君を看病するのはあたり前のことだよ。まったく気にしなくていい。第一、君は君の能力を嫌っているだろう?」

「そう、だけど……だけど! あたしにはこれしかないんだもの」

「そんなこと――っ!」


 ミゲルが唐突に顔を歪める。


「ミゲル様!?」


 彼は胸を押さえながらうずくまり、浅い呼吸を繰り返していた。


「もしかして、事故の後遺症ですか!?」


 ミゲルからの返事はない。けれど、表情がアンジュの推測が正しいことを物語っている。アンジュは彼の背中に手を当て、治癒の力を注ぎ込んだ。


「どうして言ってくれなかったんですか? あたし、もっとちゃんと治せるのに! あたし……あたしは――あたしにはそれができるのに」


 優しくしてもらって、大事にしてもらって、それなのに何の役にも立てないなんて悲しすぎる。アンジュの瞳から涙がこぼれ落ちた。


「アンジュ――そんなこと、しなくていいんだよ」


 ミゲルがアンジュの髪をそっと撫でる。


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