日向家の諸事情ですが。
なに今の……。
椅子って、椅子って言った…?
まだ出会って間もないけれど、楓くんは言動に狂気を感じつつもどこか気楽に話せる空気感があった。
天下の日向家の御曹司だとしても、こうしてシチューを疑いつつ口に運んでいる姿なんかは普通の男の子そのもの。
今までの派遣先では相手は大人ばかりだった。
こんなにも同年代は新鮮だからか、胸がうずくような楽しさがあるなんて。
「……うま」
「ほんと…!?そうでしょ!?アニキはっ」
「…おかわり、あるか」
「やったー!!」
うそっ、うそぉっ!!
すでに食べちゃってるしっ、それにわたしのお料理を美味しいと言ってくれたひとは初めてだ。
いつも失敗ばかりなわたしは。
出せてもこういった簡単に作れるものばかりで、派遣先では「なんだこの料理は」の連発だったというのに。
「じゃあこれっ、次男さんと末っ子くんにも…!」
「あー……それは無理かも」
「む、むり…?どうして…?」
「次男はろくに帰ってこないし、末っ子は……死んでる」
なにもう……。
一気に家庭の事情きちゃったよ…。
わたしも嬉しさのあまり配慮が足りていなかったことは認める。