日向家の諸事情ですが。
ぶわっと、慣れない匂いに追加されたキケンな香り。
触らなくとも分かってしまう手触りを想像させる、無造作なピンクベージュ。
どこか女性的な中性さを持ち合わせながらも、この人がいちばん男らしいだろうなと、なぜか思わせてくる底知れぬギャップのようなもの。
新たにリビングに現れた男を前にして、ドキリと、心臓が嫌な音を立てた。
「ひ、久しぶり。帰ってきたんだ」
「あのさー、絆創膏か何かってある?」
「え…、ケガでもしたの?」
どっちだ、こいつは。
次男のほう?
それとも物理では生きてるけど死んでいるらしい末っ子……?
独特な何かをまといながら現れた男は楓くんの問いかけに答えることなく、テーブルの上に置いてあったグラスの中身をゴクゴクと飲み干した。
唇の横、だれかに殴られたのだろう傷がある。
「あっ、えっと、これ……」
「……誰あんた。新しいメイド?」
「はっ、はい!」
「…俺、知らないヤツからのもんは受け取りたくない主義なんだよ」
そして差し出した絆創膏と消毒液は、ふっと笑われるまでもなく拒絶された。