利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 ある日のこと。放課後に図書館へ行くと、ひとりで勉強をしている先輩に出くわした。

「ああ、小川さん」

 私に気づいた彼が、ふんわりと笑みを浮かべる。それが素敵で、思わず胸が高鳴った。

「こんにちは。受験勉強ですか?」

「一応、ね」

 苦笑した彼の表情は、勉強の疲れだけではない重苦しさを感じさせた。

「先輩?」

「ちょうど切り上げようとしていたところなんだ。小川さんは?」

「お目当ての本を借りたので、そろそろ出ようかと思って」

 私の手にある本に、先輩が視線を向ける。
 フルート関連ばかりだと気づいた先輩は、「熱心だな」と笑った。

「俺も一緒に出るよ」

 そう言った彼にうなずき返し、ふたり連れ立って図書室を後にした。

 なにかを言ったわけではないけれど、そのまま先輩について人気の少ない中庭のベンチに隣り合って座る。
 梅雨明け間もない今は気温がどんどん高くなっているが、ここは木陰になっているため過ごしやすい。

「小川さんは、フルートが本当に好きなんだな」

「はい! 中学の頃から続けていて、将来はプロの演奏者になれたらいいなって」

 そのために家でも毎日練習しているし、腹式呼吸の訓練も続けている。
 音大を目指すのならピアノも弾けなくはいけないと、レッスンに通い始めたところだ。

「もう具体的な夢を描いているなんて、すごいな」

「褒められると、なんか照れちゃいます。好きだからがんばれるんです」

 感心されたことが気恥ずかしくて、もじもじする。

 くすりと笑った先輩は、それからふっと息を吐き出して表情を消した。
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