利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「あのさあ、小川さん」

 視線を感じて、そろりと隣に顔を向ける。

「唐突なのは承知の上だけど、俺と結婚しないか? 恋愛とかそういうのではなく、形だけの結婚だが」

「え……け、結婚!?」

 突飛もない提案に、さっきまでの愁いが一気に吹き飛ぶ。

「ひとまず聞いてほしい」

 そうして語られたのは、彼が上官から何度もお見合いを持ち掛けられて困っているという現状だった。

「命がけの仕事に就いている身だ。おまけに、任務に関しては家族にも明かせないことが多くて、不安にさせるばかりだろう。そんな俺が家庭を持っていいのかと、ずっと迷いがあった」

 昔からそうだったが、彼は本当に誠実で真っすぐな人だ。
 悲しませるくらいなら、最初から家庭を持たない方がいい。そんな考えもあるだろうけれど、それなら東坂さんの幸せはどこにあるのかと心配にもなる。

「だからって、ずっとひとりだなんて……」

 しばらく恋愛事は遠慮したい私だって、それは寂しそうだと思ってしまう。

「そのつもりだった。だが、ここで小川さんと再会して、お互いにメリットがあるのなら契約結婚もいいかもしれないと。俺は縁談避けになるし、小川さんはひとまずおばあさんを安心させられる」

 たしかにその通りだけどと、考えを巡らす。

「君となら、楽しく暮らせそうな気がしたんだ」

 はにかんだような笑みを向けられて、ドキッとする。

 高校生の頃も、彼と話している時間を楽しく感じていた。私にとって東坂さんは尊敬できる先輩で、なにより憧れの人だ。

「それに、君が理不尽に苦しめられてきたことを聞いたら、なんだかほっとけない気がした」

「でも……」

「もちろん、小川さんに好きな人ができたときは離婚に応じる。必要なら、相手にも俺たちの関係を説明するから」

「ちょ、ちょっと待ってください。私に好きな人ができる可能性は……ないとは言いませんが。今はまだ、想像もできませんから」

 さすがに話が急すぎる。

 ただ見合い話に辟易する姿を見てしまうと、きっぱり突き放せそうにない。
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