利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「お疲れさまです」

「あっ、雪乃ちゃん待って」

 仕事を終えて帰る準備をしていたところで、一緒に働く従兄の奥さんに声をかけられた。

「これ、余ってるから持って帰ってよ」

 差し出されたのは、出回り始めたばかりのアスパラガスだ。ここでは形がいびつで出荷できないものを加工しているが、新鮮で味はどれも美味しい。

「助かります。今晩はこれを使ってクリームシチューにしようかな」

 朝晩はまだまだ冷え込むから、雅樹さんのためにも温かいものを用意したい。たくさんあるから、サラダにも使えそうだ。
 彼の喜ぶ顔を想像すると、自然と口もとが綻んだ。

「ふふふ。旦那さんも幸せね。こんなかわいらしい奥さんが家で待っていてくれるなんて」

「も、もう。からかわないでくださいって」

 無意識に緩んでいた顔を、なんとか引きしめる。結婚してからというもの、こんなふうに冷やかされることが増えて恥ずかしくてたまらない。

「じゃあ、明日もよろしくね」

 帰る前にスーパーに立ち寄って、必要な食材を買い足す。雅樹さんを温かい部屋で迎えてあげたくて、足早に帰途に就いた。

 帰宅をするとすぐに、食事作りに取りかかった。
 ひとりで暮らしていたときは、仕事の後の家事を面倒に感じていた。それが誰かのためにするのだと思うと、不思議と苦にならない。

「うん。まずまずのじゃない?」

 美味しくできていると思う。
 食事が完成すると、まだ残っている洗濯物を片づけてしまおうと取り掛かった。

 するべきことは全部片づき、リビングのソファーに座り込む。
 雅樹さんの帰宅が思っていたよりも遅いようで、簡単に掃除まで済ませていた。

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