利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「まだかなあ……」

 じれったくて、時計を何度も確認する。
 帰宅が遅くなるなんて自衛官でなくとも当たり前にありうることだろうけれど、彼の職務を考えるとなにかあったのではと不安になる。先に食べていようとは思えなかった。

 静まり返った部屋でじりじりとした時間を過ごしていたそのとき。カチャリと開錠の音が響いてきた。
 ハッとして立ち上がり、急いで玄関に向かう。

「おかえりなさい」

「ただいま。遅くなってすまない」

 謝罪は不要だと、首を左右に振る。
 普段と変わらない彼の様子に、大きく安堵した。

「着替えてくる」

 料理を温め直すために、キッチンへ引き返す。
 準備が整ったタイミングで、雅樹さんがやってきた。

「先に食べていていいんだぞ」

 テーブルに並べた料理を前に、彼が申し訳なさそうに言う。

「次からはそうするね。はい、座って」

 明るい口調でそう言った私に、彼は表情を緩めて席に着いた。

 湯気の立つクリームシチューに、雅樹さんが目を細める。

「余っていたアスパラガスをもらったの。ほら、サラダにも入っているでしょ?」

 仕事でなにかあったのかとは、うかつには聞けない。
 代わりに、目の前の料理について得意げに語る。

 グリーンリーフに茹でたアスパラを加え、そこに細かく刻んでカリカリに焼いたベーコンを散らしてある。その端には、ポテトサラダも添えた。

「俺には、こんなシャレたものは作れないな」

 口もとを緩めた雅樹さんに、ようやくほっとした。

「これは美味しい。雪乃は本当に料理が上手だな。家事を目当てに結婚したわけでは断じてないが、食事だけじゃなくて生活面でいろいろと労わられるのは幸せだ。家にかえるとほっとする」

 それならよかったと、私も自然と笑顔になる。
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