利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 彼の提案で、少し遠回りをして帰ることにする。

 ここ数日でますます春めいてきて、日陰に残っていた雪はもう解けてなくなった。
 もう少し温かくなったら、少し遠くまでドライブに行こうなんて話しながらゆっくりと歩く。
 有名な観光スポットにも足を延ばしてみようと、未来の約束をたくさんした。

 ゆっくりしていたから、マンションに着いた頃にはちょうど料理に取り掛かる時間になっていた。

「そんなに見られると、やりにくい」

 キャベツを千切りにする心地よいリズムが響く。思った以上の慣れた手つきに驚いて、つい凝視していた。

「雅樹さんは、なんだってこなしてしまえるんだなって」

「なに言ってるんだ」

 本気で感心する私に、彼が苦笑する。

「私は、お味噌汁づくりに専念します!」

 私よりも手慣れているかもしれない。そんな彼へ敬意と冗談を混ぜて敬礼してみせると、雅樹さんはついに噴き出した。

「雪乃といると、本当にあきないなあ」

 自宅にいるときくらい、彼をリラックスさせてあげたい。そう思っているのに、雅樹さんは私のことばかり気にかけている。
 それが彼の性分だというのなら、止めることはしない。それなら、私はさらに彼を労わればいい。そのひとつとして、こうやって明るく振る舞うようにしている。

 料理がすべて完成したところで、そろって席に着く。

「美味しい! さすが雅樹さん」

 真っ先に口をつけたのは、もちろん彼が作った生姜焼きだ。

「本もなにも見ていなかったよね? すごいなあ。本当に美味しい」

 レシピが頭に入っているほど、作り慣れているらしい。

「褒めすぎだから。雪乃のお味噌汁も、具沢山で美味しいぞ」

 ふたりで作ったという特別感が、食卓をますます明るくする。

「また、一緒に作りたいなあ」

「ああ、そうだな」

 よかった。雅樹さんもこの時間を楽しく感じてくれたようだと、満足感でいっぱいだった。



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