利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 買い物を終えて、再び車で移動する。

 雅樹さんが連れてきてくれたのは、空港の近くにあるホテルのレストランだ。

 今夜は完璧にエスコートするからと事前に言われていた通り、車を降りた彼は素早く助手席にまわりドアを開けてくれる。
 そこで差し出された手にドキッとしたが、なんとかさりげなさを装って自身の手を添えた。

 契約結婚ではあるが、夫婦になるからには打ち解けた関係でいたい。それは彼も私も望んだことだ。ただ、これまでに直接触れ合うような機会はほぼなかった。

 意識するほどのことでもない。そうわかっていても、少しかさつく大きな手に握り返された途端にどんどん鼓動が速くなっていく。

 車を降りたところで手を離そうとすると、雅樹さんはわずかに力を込めてそれを拒んだ。

 どうして?と、首を傾げながら隣を見上げる。平静を装っているが、内心はまったく落ち着かない。

「俺たちは夫婦なんだ。手をつないでも不自然じゃないだろ?」

 硬派な彼が見せる優しい笑みに、うっと言葉に詰まる。逃れるように視線を落とせばつながれたふたりの手が視界に入るわけで、頬が熱くなってきた。

「そ、その通り、ですね」

 私が恥ずかしがっているのは、彼にはお見通しなのだろう。頭上から笑い声が聞こえたが、あえて気づかないふりを押し通した。

 連れていかれた最上階に位置するレストランは、どの席に座っても夜景が楽しめそうだ。

 私たちは個室に案内された。そこでようやく手を離されてほっとする。けれど、それまであった温もりがすぐに恋しくなる。

 これくらいのことで惑わされていてはだめだと自分を叱咤しながら、向かい合わせに席に着いた。

「あらためて、誕生日おめでとう」

 まずは食前酒で乾杯する。帰りも運転があるため、雅樹さんはミネラルウォーターだ。私もそうしようとしたが、彼から主役なんだから好きなようにしてほしいと言われてシャンパンをお願いした。

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