利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 あたふたしているうちに、左手はあっけなく解放される。

 それから彼は、自分にもおそろいで用意したのだと、私の目の前で薬指にはめてみせた。

「さらに夫婦らしくなったな」

 私の大好きな、無邪気さすら感じさせる笑みを浮かべる。その素敵な表情に、鼓動がひと際大きく跳ねた。

 雅樹さんはこんなに素敵な人だから、きっとどこにいても異性の目を惹きつけてしまうだろう。私と一緒にいるときだって、振り返って彼を見つめる女性を何度か目にしてきたくらいだ。

 指輪をしていれば、そういう女性が彼に近づく可能性はぐっと減るのかな。そんな自分勝手な想像をしかけて、慌てて打ち消した。

 この幸せな時間を失いたくないけれど、いつかは手放さなければいけないものだとわかっている。

 どちらかに好きな人ができたら別れる関係。その当初の約束に、胸がズキズキと痛みだす。

 彼の仕事は、命の危険がつきまとう。だから雅樹さんは家族を持つことに躊躇しているのだと、話していた。

 けれど、人を好きになる気持ちは止められない。
 彼がもし私以外の誰かを好きになったら……と想像すると苦しくなる。

 このまま雅樹さんとずっと一緒にいられたらいいのにと、叶わないとわかっている未来を願わずにはいられない。


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