利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 食後のコーヒーを楽しむ彼を、こっそり伺う。

 見た目は文句なしにカッコよくて、高校生の頃から彼はずいぶんとモテていた。でも、彼のよさはそんな外見だけじゃないと、当時から私は知っている。

 勉強も運動もできるのに、少しも驕ったところがない。突然知らない後輩に話しかけられたって、突き放すことなく応じてくれた。私が悩みをこぼせば、共感しながら自分の経験をもとに助言もしてくれる。それが決して押し付けではないから心地いい。

 雅樹さんは、相手の気持ちに自然と寄り添える人なのだろう。
 彼が好きだから、それを向ける相手は私だけであってほしいと望んでしまう。

 自身のそんな感情に戸惑うけれど、相手はもともと憧れていた男性だ。それが夫婦となって、物理的にも精神的にも距離が近づいた。その近すぎる距離感で、さらにここまでに気にかけてもらえて好きにならないわけがない。

 どれだけ優しくされてもそれは彼の性分で、私たちは契約の関係にすぎない。その事実が、これまで以上に重くのしかかる。

「どうかしたか?」

 すっかり黙り込んでいた私に、雅樹さんが心配そうな顔をする。

「う、ううん。このクレームブリュレが美味しいなって思って。うちで作るには……バーナーがないから難しいかなあ」

 咄嗟に思いついたことを言いながら、慌ててスプーンを口に運ぶ。

「どの料理も、本当に美味しかった。連れて来てくれてありがとう、雅樹さん」

「喜んでくれたようで、よかったよ」

 好きだという気持ちは伝えられない代わりに、せめて一緒にいられる間は彼に尽くしたい。それに体を張って国を守る仕事している雅樹さんに、ふさわしい相手でありたいと思う。

 不当に傷つけられたのだから、落ち込んだって仕方がない。なんていつまでもこのぬるま湯につかっているわけにはいかない。

 私にできること、私がやりたいことを見つけて、もっと雅樹さんに認めてもらいたい。密かにそんな決意をした。



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