利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 あの頃に抱いた憧れは、その後も色あせることはなかった。

 けれど、成長するにつれて現実も見えてくる。

 父はそれなりに大きな会社を経営しており、兄か俺のどちらかに後を継いでほしいと望んでいた。

『雅樹は自衛官になりたいんだろ? なら、父さんの会社は俺が継ぐから心配するな』

 兄がそう言ったのは、俺が中学を卒業する頃だった。
 もとから会社は兄が継ぐものだと思い込んでいた。そこに嫉妬心などはなく、兄にその立場を譲ってやると言われてもうれしくはない。

 父の会社に対して熱意が足りないのは、航空自衛官という一番の夢があったから。家族全員が、俺の希望を知っていた。

 会社は兄が守ってくれるから、俺は自分の望む道を目指す。そう決めていたが、高校へ進学して友人らと進路について話していたときふと迷いが生じた。

 兄だって、ほかに夢があったのではないか。そうでなくても、社長という重責を担う兄を支えるべきじゃないか。
 社長という立場がどれほど大変かは、父を見てきたから少しはわかっているつもりだ。それを兄だけに背負わせていいのかと、自分だけ望みを叶えようとすることに罪悪感を抱いた。

 ずっと悩み続け、そろそろ進路を決めなくてはいけない時期だというのに決断ができない。

 無難な大学へ進み、結論を先延ばしにするか。
 自分らしくない消極的な考えに傾きかけていた頃にかけられたのが、雪乃の言葉だ。

『自衛官として国を守るのは、拡大解釈をしたらお兄さんを守るってことですよ』

 当時交わした会話は、大人になった今でも鮮明に覚えている。

『好きなことを仕事にできるって素敵じゃないですか!』

 そのストレートな言葉が、俺の中にストンと落ちた。
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