利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 兄は長男として生まれた義務感から、父の会社を継ぐといっているのだと思っていた。

 けれど今なら、自らそれを望んでいたのだとわかる。大学生になった兄が、『自分が社長になったら』と頻繁に口にしていたのは、彼の並々ならぬ意欲の表れだ。
 手助けをしなければいという俺の迷いは、独りよがりのものだったのかもしれない。

『そうか。自衛官の仕事は、兄を守ることにもつながるんだな』

 雪乃と別れ、ひとりになった帰り道でポツリとつぶやく。
 拡大解釈とは上手く言ったものだが、たしかにその通りだなと笑いが漏れた。

 防衛大学校を目指して自衛官になると、覚悟はできた。家族の賛同も得られ、そこからはもうブレなかった。

 バタバタと忙しくしていたため、それから雪乃と会う機会がほとんどなくなっていた。彼女が部活動で表彰されているのを見かけて、変わらずがんばっているのだなと遠目に確認したくらいだ。

 結局、最後まで礼を伝える機会もないまま卒業を迎えてしまった。

 中途半端な別れになってしまったが、彼女にはずっと感謝していた。雪乃はいわば、俺の背中を押してくれた恩人のような存在でもあった。

 その雪乃と、まさか北海道で再会するとは思ってもみなかった。

 記憶の中にある雪乃は、真っすぐで屈託なく笑っている。

 それがまるで別人のように暗い顔をしている。あれほど明るかった彼女が、いろいろとあきらめたように涙を流す姿には胸がしめつけられた。

 その理由は、冤罪で職場を追い出されたからだという。

 とても許せるものではなかった。
 かわいい後輩をよくもと、怒りが込み上げてくる。

 だが、それよりも彼女の心の方が心配だ。話を聞くだけでも少しはすっきりするだろうと、しばらく彼女の隣に居座った。

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