利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 不当に傷つけられて、心に余裕などないだろう。それにもかかわらず、彼女は世話になっている祖母に迷惑をかけたくない、安心してほしいと気遣う。そういう優しさが、ますます彼女自身を苦しめているのかもしれない。

 気持ちはわかるが、今は自分が立ち直ることに専念するべきだ。そしてまたあの明るい笑顔を見せてほしい。

 あの頃、俺の背中を押してくれた礼にという気持ちもあったかもしれない。自分が彼女をどうにかしてやりたいと、できることを思案した。

『唐突なのは承知の上だけど、俺と結婚しないか? 恋愛とかそういうのではなく、形だけの結婚だが』

 そこで思いついたのが、せめて祖母への後ろめたい気持ちを拭ってやるための契約結婚だった。
 恋愛感情とは違うが、俺にとって雪乃は好ましく思っていた可愛い後輩だ。高校生の頃だって、共通事項などなにもなくてもふたりの間では話が弾んだものだ。逆に会話もなく隣にいられても、不思議と馴染んでいた。

 彼女となら上手くやれるだろう。だから距離が近づくことに抵抗はない。

 それに……と、俺を取り巻く苦々しい現状に、眉間にしわが寄る。

『帰る場所ができると、今よりもっと強くなれる』

 上官はそんなことを言って、頻繁に見合い話を持ち掛けてくる。そのあたりは両親も似たようなもので、『いい人はいないのか』と帰省するたびに探られた。

 親切心や親心を煩わしく感じるのは失礼かもしれないが、その気がないのだから仕方がない。不安にさせてばかりになるとわかっていながら、家庭を持とうとは思えなかった。

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