利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 久世総合病院を退職した私は、しばらくの間は落ち込んでなにも手につかない日々が続いた。

 とはいえ、いつまでもうじうじしているわけにはいかない。生きていくためには働かなければと、重い腰を上げた。

 人手不足だというのに、就職活動は思うように進まない。履歴書を提出した段階で断られることが三回も続いた。
 ようやく面接にこぎつけた病院は、その場で履歴書を渡すように言われていた。

 採用担当者は『経験者だというのは、こちらとしてもありがたいです』と、最初こそにこやかに私を迎え入れてくれた。
 しかし書類に目を通していく途中で、だんだん眉間にしわが寄っていく。

『申し訳ありませんが……』

 さすがにここで断られるのは納得がいかず理由を尋ねると、渋々と話し始めた。

 それによると、私が前の病院で結婚の決まった院長の息子をたぶらかしたて辞めさせられたという悪評が、近隣の病院に出回っているという。

 おそらく、院長親子や婚約者の手が回っているのだろう。誰かを悪者にしなければ、収まりがつかなかったのかもしれない。

『うちとしても、秩序を乱されても困りますから』

 噂を信じているのはわからないが、久世総合病院のような大きなところに睨まれたら困るのかもしれない。この場で私がいくら反論したところで、結果は覆らないのは明白だ。

 もう近隣で同じ職を探すのは無理かもしれないと怖くなる。住む場所だって変えざるをえないのか。

 祖母が久しぶりに連絡をくれたのは、そんなふうに不安になっていたときだった。



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