利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 雅樹さんの態度に甘さが増して悶々としていたある日。彼は「しばらく家を空ける」とだけ残して仕事へ向かった。

 詳しく言えないのはいつものこと。ただ〝しばらく〟という言い方をするのは、これまでよりも長く不在にするという意味なのかもしれない。

 そう思った通り、雅樹さんはすでに一週間家を空けている。
 日に一度は連絡をくれるから、無事だとわかっている。けれど詳しい事情はやっぱり語られず、彼がどこでなにをしているのかはなにも知らないでいる。

 近すぎる距離に戸惑ってばかりだったから、たまには離れて頭を冷やすべきだ。そういう時間を必要と感じていたはずなのに、雅樹さんが帰ってこないと寂しくて仕方がない。それに任務の内容が危険を伴うものだったらと思うと、不安でいっぱいになる。

「旦那さんが長く家を空けていると、寂しいわよね」

 仕事の休憩時間にそう尋ねてきたのは、従兄の奥さんだ。
 なんて答えたらいいのか瞬時に思いつかず、曖昧な笑みを返す。

「雪乃ちゃんったら、ずっと浮かない顔をしているから」

「……寂しいって、彼に言ってはいけないかなって」

 少し前までは、私たちの仲は良好だと意識的にアピールしてきた。

 でも雅樹さんが好きだと気づいてからは、思ったままの気持ちが勝手に漏れ出てしまう。彼には好意を伝えられないが、家族や一緒に働く仲間には隠さずに明かしている。

 なんでも顔に出てしまいやすい私のこと。もしかしたら、私が寂しがっていると雅樹さんも察しているのかもしれない。


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