利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 そうだとしても、言葉には絶対にしない。彼を困らせてしまうだけだから。

「航空自衛官は、雅樹さんが子どもの頃から憧れていた仕事なの。だから、心配は尽きなくても応援をしたくて。絶対に笑顔で送り出そうと決めているし、帰ってきたときは温かく迎えてあげられるようにしたくて」

 不安は常にあるが、国のために体を張る彼が誇らしい。安全に気をつけた上で、彼の思うままがんばってほしい。

 伝えられない気持ちは、部屋を整えたり美味しい食事を用意したりする中に込めているつもりだ。それが彼に通じていなくてもいいと思っている。

 というようなことを聞かれるまま話していると、目の間の彼女はにんまりと笑った。

「雪乃ちゃんは、旦那さんのことを本当に愛しているのね。ごちそうさま」

 惚気ているつもりはまったくなかったものの、彼女にはそう聞こえていたらしい。私が恥ずかしがると、彼女をはじめとした周囲はますます茶化してきた。

 こういう軽いやりとりを嫌味なくできる関係は、前の職場にはなかったものだ。その近しい関係は、私にとって心地いい。

 私たち夫婦が相思相愛だと伝わることは、ふたりの思惑通りだ。

 羞恥心に襲われて視線を泳がせた私を、彼女はくすりと笑った。

 「可愛い奥さんに深く想われて、旦那さんも幸せね」

 さらに茶化すように言われて、もう降参だと両手で顔を覆った。



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