利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
『変わりないか?』

 夜になり、雅樹さんから電話がかかってきた。
 任務の詳細は明かせなくても、決められた時間に連絡を取り合うことは可能だ。

「うん。大丈夫だよ。雅樹さんは、ケガとかしていない?」

『問題ない。ああ……』

 大丈夫だと言いながら、わずかに悲痛な声をあげる。どうしたのかと心配で、スマホを握る手にぐっと力がこもった。

『雪乃の手料理が恋しくてたまらない。早く、会いたいなあ』

「も、もう! なにかあったのかって、構えちゃったじゃない」

 しんみりしないよう、茶化したのだろう。照れ隠しで言い返すと、クスクスと笑うのが伝わってきた。

 ちょっとムッとしたけれど、話ができる貴重な時間を無駄にはしたくない。気を取り直して、明るい口調を意識する。

「雅樹さんが帰ったらなんでも作るから、今のうちにリクエストを考えておいてね」

『それは楽しみだ。じゃあ、また連絡する』

 プツリと切れたスマホを、名残惜しくてじっと見つめる。

 もっと話していたかった。彼もそんなふうに感じてくれていたらいいのに。
 家事をしないといけないのに頭を切り替えられず、しばらくスマホを握りしめたままでいた。



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