利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 見逃してはくれないのだろうと、小さく息を吐き出す。

「雅樹さんは残される家族のことを考えて、自分は結婚しないって言っていたから。こんなふうに私が過剰に心配したら――」

 重荷になるでしょ?と、最後まで言い切る前に再び彼の腕の中に閉じ込められてしまう。

「雪乃に心配されるのは悪くない。申し訳ない気持ちもあるが、それでも俺はうれしく思っている」

 顔を起こした彼が、再び私の顔を覗き込む。

「雪乃は特別だから」

 額に口づけられて、ドキリとする。

「俺にこうされるのは、嫌じゃない?」

 コクコクと、小さくうなずく。
 嫌なわけがない。

「じゃあ、これは?」

 そう言いながら、私の唇に彼は触れる程度に口づけた。

 驚きに目を見開く。理解が追いつかず、その場に立ち尽くしてしまう。

「嫌だったか?」

 かろうじて首を小さく横に振る。

「それはよかった」

 彼がうれしそうに顔をほころばせる。

 遅ればせながらキスされたと実感がわき、じわじわと頬が熱くなってきた。

「雪乃のこんな可愛い顔は、誰にも見せたくないな」

 羞恥心でどうにかなってしまいそうだ。
 ふたりきりだというのに、周囲から隠すように私を胸もとに抱きすくめてしまう。恥ずかしくてたまらないが、今はまともに彼の顔を見られそうにないから助かった。

「心配をしてくれて、ありがとう」

 絶対的な安心感を与えてくれるこの腕の中にいても、今だけはさすがに落ち着かない。痛いほど打ちつける激しい鼓動が、彼に知られないようにと密かに祈った。

< 56 / 91 >

この作品をシェア

pagetop