利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 雅樹さんが不在の間は、カウンセラーの勉強に集中するようにしている。なにかをしていないと、安否ばかりが気になってしまうからだ。それでは身が持たないと、目標を見つけられたことはよかった。

 彼が家を空けて六日が経った今日は、仕事が休みだから自宅でゆっくりとしていた。
 溜まっていた家事を終わらせ、コーヒーを淹れてカウンセラーの参考書を開く。
 実践的な問題は勿論だが、暗記が必要な専門用語がたくさんあるからなかなか大変だ。でもなにかを覚えるのは久しぶりで、新しい知識を得られることはワクワクする。

「うーん、もうこんな時間」

 両手を組んで、頭の上にぐっと伸ばす。すっかり集中していたら、すでに十二時を過ぎていた。

 ひとりだからと、残り物で簡単な昼食を済ませる。
 そのままリビングのソファーでゆっくりしていたところ、インターフォンが鳴った。

「誰だろう?」

 私たちが結婚して以来、ここへお互いの知り合いが訪ねてきたことはまだない。一度だけ、結婚してすぐの頃に祖母を招いたくらいだ。

 荷物が届く予定もないしと、首をひねりながらモニターを覗く。そこには、私とは面識のない女性が映っていた。

「はい」

「東坂さんのお宅ですか?」

「そうですけど……?」

 怪しい勧誘かと警戒する。

「雅樹について、あなたにお話したいことがあります」

「え?」

「会っていただけますか?」

 この女性と彼はどんな関係にあるのか。親しげな呼び方をしているところに、あれこれ嫌な想像が膨らむ。

 雅樹さんの名前を出されたからには、無視もできない。

 ただ彼が不在の中、よくわからない人を自宅に招き入れるのも怖い。

「外でよろしければ」

「わかりました」


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