利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「私と雅樹は意見の食い違いで別れただけで、嫌いになったわけじゃないわ。お互いに気持ちを残したままだったのよ。彼は最後まで、恋人として一緒に入ればいいじゃないかって私に懇願し続けていたの。でも、当時の私はそれを受け入れられなかった」

 どれほど苦渋の決断だったのだろうか。
 辛そうな表情をした彼女が、瞼を伏せる。その姿からは、悲愴感が漂っていた。

 これは過去の話だと、何度も自分に言い聞かせる。雅樹さんがこの女性と今でも会っているなんて、嘘に違いない。

 でも、本当に?と、西崎さんを前にしていると自信がぐらぐらと揺らぐ。

「雅樹ってば、私を忘れられなかったんでしょうね。突然連絡をしてきたと思ったら、それから頻繁に会いに来て、何度も私を抱くの」

「そんな……」

 瞳を揺らす私を見て、彼女がますます笑みを深める。

「私は拒否したのよ。今は付き合っていないし、なによりあなたという奥様がいるのだから」

 ニヤリと笑った彼女からは、申し訳なさなど微塵も伝わってこない。彼の方から言い寄ってくるのだから、仕方がないでしょ?とでも言いたげだ。

「あなたでは、満足できないんでしょうね。だって彼はまだ私を愛しているもの。だから、ひと晩に何度も求められて……もしかして、奥様は彼に求められていないのかしら?」

 雅樹さんは、あの大きくて温かな手でこの女性に触れたのだろうか。仮初の妻でしかない私では口づけ以上はできないから、元カノであるこの人の所へ行くのか。

 そんな動揺は、私の顔にも表れていたのだろう。西崎さんは満足そうな表情で、さらに私を攻めてくる。

「彼も普通なら結婚していてもおかしくない年齢だし、周りからいろいろ言われていそうね。自分の主義は曲げたくなくて、それが煩わしかったりして」

 まさしく指摘通りで、彼女の言い分に真実味が増す。

「あなたは、私の身代わりでしかないのよ」
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