利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「雪乃、ただいま」

 西崎さんと対峙した翌日。数日間の任務を終えて、雅樹さんが帰宅した。

 いろいろと考えてしまうけれど、彼が無事に帰ってきてくれたことはなによりもうれしい。不安は一時忘れて、自然と笑みが浮かんだ。

「おかえりなさい」

 逞しい腕が私を捕まえ、その胸もとに閉じ込める。大好きな温もりに包まれて、ようやくほっとした。

 いくら契約の関係とはいえ、雅樹さんは私を大事にしてくれている。ちゃんと私を尊重してくれるし、不在の間も欠かさず連絡をくれた。

 まだ私が妻でいていいのだと信じたい。

 彼の無事をもっと実感したくて、胸もとで深く息を吸い込む。そこで、瞬時に体を強張らせた。

 家で使っているものとは違うソープの香りが、ふわっと鼻くすぐる。

 自衛隊の基地には、シャワーが完備されている。
 雅樹さんたちパイロットが着用するフライトスーツはかなり暑くなるようで、彼はいつも汗を流してから帰宅する。それはずっと続けている習慣だと、私も彼から聞いている。

 抱きしめられるようになってからこの香に気づいていたけれど、事情を知っていたから疑問に思わなかった。

 でも……。

 脳裏に浮かんだのは、同性の私から見ても魅力的なスタイルをした西崎さんの姿。

 本当は、彼女のところでシャワーを浴びてきたのかもしれない。そう疑いかけて、慌てて打ち消した。
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