利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 翌日になり、仕事から帰宅して郵便物をチェックしていると、真っ白な封筒を見つけた。
 書かれているのは私の名前だけ。住所は記されていないし、切手も貼られていない。つまり、直接郵便受けに入れられたもののようだ。

 警戒しながら、開封をする。

【早く、雅樹さんと別れて】

 中に入っていた便せんには、たったひと言そう書かれているのみだった。
 間違いなく、西崎さんだろう。

 同じ手紙が、翌日もまたその次の日も届く。
 帰宅をするのはいつも私の方が早いから、雅樹さんの目に触れることがないのはよかった。

 ただ西崎さんが毎日ここまで来ている事実は、気持ちのいいものではない。
 今日もあの封筒が入っているのかと、自宅に向かいながら何度もため息が漏れる。

 都心で暮らしていたときとは違い夏もそれほど蒸し暑くはならず快適だというのに、心はズシリと重くうつむきがちになってしまう。

 西崎さんの執拗な言動に恐怖を感じるし、さすがに雅樹さんに話すべきかもしれない。

 話は長くなるだろう。できる限り雅樹さんの負担にならないように、休みの前の日に切りだすのがベストかな。

 そう考えていたとき、マンションのエントランスの端に、白い服を着た女性が立っているのを視界に捉えた。

「西崎、さん……」

 気づいたところで、足が止まる。

「ようやく会えたわ」

 そう言いながら、彼女は私の方へ近づいてくる。

 もしかして、これまでにも何度か私を待ち伏せていたのだろうか。

「雅樹と別れる決心はついたかしら?」

 私の二メートルほど手前で彼女が足を止める。
 どう対応するべきか思案しながら、バッグのストラップを強く握りしめた。

「まだ、雅樹さんとゆっくり話ができてい――」

「いい加減に、待ちくたびれたわ。雅樹はここのところ、さらに頻繁にうちへ来るようになったし」

 私の言葉を遮ってそう言うと、西崎さんは嫣然と微笑んだ。彼に愛されているのは自分だと、強い自信を持っているように見えてしまう。
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