利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「大丈夫ですか」

 ここに来て、どれくらい時間が経っただろうか。ふいにかけられた声にハッとして、目を開ける。

 座ったまま見上げると、心配そうに覗き込む男性と視線があった。
 鍛えているのか、ずいぶんと大柄なガッチリとした体つきの人だ。スポーツウエア姿から想像するに、ジョギングでもしていたのかもしれない。

「泣いいたようだから」

「え?」

 頬に触れると、しっとりと濡れている。自分のことなのに、まったく気づいていなかった。

「あっ、ご、ごめんなさい」

 他人に泣き顔を見られるなんて恥ずかしくて、彼から視線を逸らして頬を拭う。

「いや、謝る必要はないから。体調が悪いとかでないのならいいが……もしかして、小川さん?」

「え?」

 どうして私を知っているのかと、もう一度見上げる。
 首を傾げた男性をじっと見つめて、ハッとした。

「あの、東坂(とうざか)先輩……ですか?」

 探るようにこちらを見ていた男性が、親しみのこもった笑みを浮かべる。

「そうだ。高校で一緒だったな」

「こんなところで東坂先輩に会うなんて、すごい偶然」

 暗く沈んだ気持ちは一気に吹き飛び、久々の再会に浮かれる。ちょっとしたきっかけで話をするようになった彼は、私の憧れの先輩だったから。

「この歳で先輩は、ちょっと恥ずかしいかな」

 彼とは同じ高校に通っており、私より二学年上だった。だから今は三十歳のはず。

「じゃあ、東坂さん?」

「ああ。それにしても、懐かしいなあ。隣いい?」

 そう聞かれて、慌ててスペースを開けた。

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