利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 結局、それ以上の情報を得られないまま朝を迎えていた。

 テレビのニュース番組では、領空侵犯の件を大々的に扱っている。

【――自衛隊機は、外国籍の偵察機を長時間にわたって追跡し、警告を発し続けていたということです。また外務省は外交ルートを通じて、強く抗議を行いました】

 テレビを食い入るように見つめた。

【担当した自衛隊員は、どれほどの緊張を強いられていたことか】
【私たちがいつも通りの暮らしをしている中で、彼らは命がけで国を守ってくれている】

 今回は何事もなく終わったが、一歩間違えたらどうなっていたかわからない。

 自衛隊の任務が、危険な仕事だとわかっていた。
 それなのに私は彼に嫌われたくないとか、このぬるま湯につかったような優しい関係を壊したくないからと甘えきって、自分の気持ちを伝えようともしなかった。

 好きだって言っておけばよかったと、昨夜は彼の無事を祈りながら後悔の念に襲われていた。

 とにかく今は、雅樹さんに早く帰ってきてほしい。そう願っていたところで、玄関から聞こえたわずかな音にハッとして顔を上げた。

「ただいま」

「……お、おかえり、なさい」
 我に返って、声をあげながら玄関に駆けていく。
 靴を脱ぎ終えて振り返った彼の胸もとに、そのまま飛び込んでいた。

「おっと」

 逞しい腕が、私を難なく受け止めてくれる。

「無事で、よかった」

 涙が勝手に溢れてくる。

 戸惑いを見せていた雅樹さんだったが、すぐに察したのだろう。

「連絡もできず、心配かけてすまなかった」

 大きな手が、私の頭を優しくなでる。
 謝る必要なんてないと、うつむいたまま首を横に振るしかできない。

 雅樹さんは、しばらくそのまま私を抱きしめてくれていた。
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