利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「きゃあ」

 ふわりと体が浮く感覚に驚いて、彼にしがみつく。

 気づけば彼に抱き上げられており、初めてのことに鼓動が速くなる。

「ほら、雪乃。とりあえず、中に入ろう」

 疲れている彼を、玄関に足止めしていたことに思い至っていなかった。

「ご、ごめんなさい。重いから、降ろして」

「これくらい、なんてことない」

 そうこうしているうちに、リビングのソファーにそっと降ろされた。

「もしかして、昨日はずっとここに?」

 立ったままの雅樹さんが、室内を見回す。
 テーブルの上に無造作に置かれたリモコンや、片づけきれていない夕食の様子に察したのだろう。そこまで気が回っていなかった自分が情けなくなる。

「雅樹さんの帰宅が遅れているし、テレビで速報を見てもしかしてって……なにも、手につかなくて」

 再び視界が潤みだす。

「不安にさせてしまったな」

 それは雅樹さんのせいじゃないと、首を横に振る。
 隣に座った彼が、私の手を取ってそっと包み込んだ。

「雅樹さんに万が一のことがあったらって、すごく怖くて。後悔ばかりが押し寄せてきて。なんでちゃんと気持ちを伝えなかったのかって」

 涙で自分がなにを言っているのか、よくわからなくなってくる。
 必死で話していると、雅樹さんが私の腕を引いて胸もとに抱き寄せた。
 私の背に両腕を回し、至近距離から顔を覗き込んでくる。

「雪乃」

 甘さの滲む声音に、ドキリと鼓動が跳ねた。

「どんな気持ちを俺に伝えたかったんだ?」

「え?」

 彼に指摘されて、自分がなにを口走ったのかに思い至る。

「そ、それは……」

 ここでごまかしては、これまでとなにも変わらない。
 別れを切りだされるかもしれないとか、西崎さんを選ぶんじゃないかという不安をのみ込んで、意を決して彼を見つめ返す。
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