利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「わ、私、雅樹さんが好き。たとえあなたに、ほかに想う人がいても……」

 ぱっと目を見開いた雅樹さんが、瞬時に困惑顔になる。

「ほかに想う人?」

 そうだと、うなずく。

「そんな相手はいないが。この仕事に就いてから、親密になった女性などいない。もちろん、想いを寄せた相手もだ」

「え?」

 今度は私が困惑する側だ。

「だって、西崎さんが……」

 その名前を出した途端に、雅樹さんが険しい顔になった。

「西崎……もしかして、西崎沙良か?」

「う、うん」

「どうして雪乃がその名前を知っているんだ?」

 あの女性が雅樹さんと関係があるのは、どうやら間違いではないらしい。
 ただ、想像していたのと反応が違いすぎる。

 少なからず、ふたりは過去に交際関係にあったのかもしれないと感じていた。

 けれど彼女の名前を出した途端に、雅樹さんはいかにも不快そうな顔をした。というより、強い拒絶の反応と言ってもいいのかもしれない。眉間に深くしわが寄り、すっと細めた目には怒りの感情が浮かんでいる。

「雪乃、俺が家を空けている間になにがあった?」

 私に怒りを向けているわけじゃないとわかっていても、彼の剣幕にたじろぐ。
 私の手を包む彼の手にわずかに力がこもったのは、すべて話すまで逃がさないという意思表示だろうか。

 予想と違った様子におののきつつ、彼が不在の間に西崎さんが尋ねてきた話をこのタイミングで聞かせることにした。
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