利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
「俺の気持ちは伝わっていなかったか?」

 私を抱きしめた腕を、なにかを促すように彼が軽く揺する。

「けっこう、がんばったつもりだったが」

「だ、だって、契約結婚だって……」

 我に返ってようやくそれだけ言うと、凌也さんは気まずそうな顔をした。

「そうだな。たしかにそう言った。あれは取り消させてくれないか?」

 なぜ?と、視線で尋ね返す。

「再会したときに話した俺の事情は、すべて事実だ。加えて、俺の可愛い後輩が理不尽な目に遭わされたことに怒りを覚えた」

 その気持ちは、ちゃんと伝わっていた。

「それに、雪乃は高校生の頃に俺の背中を押してくれた恩人だ」

「恩人だなんて」

 それは言い過ぎだと思う。

「利害は一致するし、一緒にいれば雪乃を元気づけてやれる。そう思っていたが、結婚して自分が支えてやろうなんて考えは、すぐに傲慢だったと気づいたよ」

 話がよくわからず、首をかしげる。

「辛い目に遭ってもなんとか前を向こうと努力する姿とか、急な話にもかかわらず俺を労わろうと心尽くしてくれる優しさに、次第に雪乃を好きになっていった」

 再び想いを告げられて、徐々に実感していく。じわじわと、頬に熱が集まりだした。

「俺を好きになってもらいたくて、けっこう攻めていたんだぞ」

 意図はわからなかったものの、以前よりも彼の言動に甘さが増したことは気づいていた。

 羞恥心に襲われて、うつむきそうになる。けれどそれより先に、彼がさらに顔を近づけてくるから叶わない。
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