利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 それからすぐに、私たち夫婦は無事に官舎への引っ越しを終えられた。

 雅樹さんとともに各部屋へ挨拶に訪れたが、同世代の夫婦が多く、話が合いそうだとほっとしている。

「それじゃあ、いってくるから」

 仕事に向かう雅樹さんを、玄関先で見送る。
 私はこの後、隣室の溝口(みぞぐち)さんに掃除当番の仕事を教えてもらう予定でいる。私と同年代の、明るい女性だ。

 マンションに住んでいたときとは違い、官舎には細かなルールや当番制のものがいくつかある。いろいろな人と知り合うチャンスだと思うと、それも楽しみだ。

「おはようございます。お待たせして、すみません」

 時間より少し早く外へ出たが、溝口さんはすでに待っていた。

「大丈夫よ。子どもを幼稚園に送りだしたところだから」

 早速道具の場所を教えてもらいながら、掃き掃除を始める。

「もうほんと、やんちゃ盛りで。先に謝らせて。うるさくしちゃったら、ごめんね」

「いいえ。元気いっぱいでいいじゃないですか」

 挨拶に伺ったとき、廊下を勢いよく駆けてきた男の子を思い起こす。彼は初対面の私たちに、大きな声で挨拶をしてくれた。

「――夫が長く不在にすると、だんだん不安でたまらなくなってしまって」

 溝口さんが気安い感じだから、話の流れで悩みを打ち明けていた。

「そうよね。私も、結婚したばかりの頃はそうだったわ。ひとりでいることに耐えきれずに、実家に帰ったりもして」

 もちろん今もいつも心配していると、彼女が付け加える。
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