雪の音色に包まれて
僕は春が嫌いだ。雪音(ゆきね)さんに逢えなくなるから。

雪音(ゆきね)さんがこの街へ戻って来るまで、3つもの季節を越えないといけない…。

僕は幼い頃から養護施設で暮らしていた。

両親は、ある日僕を置いてどこかへ行ってしまった。

周りの大人たちが「シャッキン」とか「ヨニゲ」とか、難しい言葉を口にしていたが、僕には意味がわからなかった。

ただ1つ、僕には「親に見捨てられた」という絶望感が残った。



それでも、僕は雪音(ゆきね)さんとの約束通り、元気にしていた。

春、夏、秋、長い季節を越え、次の冬がやってきた。

雪音(ゆきね)さんは、まるで初雪に合わせるように僕を迎えてくれた。

僕は9歳になり、少し大人に近づいたのに、雪音(ゆきね)さんは去年の冬と変わっていなかった。
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