蝶よ花よ、あこがれに恋して



弱々しいおねだりに、ずきゅん!と、撃ち抜かれる簡単な私は、「もちろんです!」と頷いてしまった。ああ、わたし、なんてちょろい……!

「で、でも……引かないでくださいよ」

「何が?」

「何がなんでも、です」

「どうせ服が脱ぎっぱ、とかでしょ」

「ちがいますよー……」

桜庭さんは私の拘束を解かないから、身体の向きを変えて後ろからハグされた状態で足を動かす。

ドアを開けたら全部片付いていたりしないかな……!!

なんて夢みたいな妄想をみながらリビングのドアを開ける。残念ながら当然そのままの部屋が待っていて、こうなれば、お願いします桜庭さんの視界からダイニングテーブルだけを消してください……!!!

「…………え?」

これもまた私の妄想で、桜庭さんの目はばっちりテーブルの上を見ている。絶対絶命だ。

「や、あの、これはですね、夜に突然ケーキが食べたくなっただけで、深い意味は全然なくて……」

そんなの、1ヶ月記念日♡と書かれたプレートを前には苦しい言い訳で、通用しないのは私でも分かっている。


『え、あの子とまだ続いてんの?』

脳裏にいつかの記憶が蘇った。
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