蝶よ花よ、あこがれに恋して


「ねえ、そういえばカレー、できた?」

桜庭さんが小首を傾げた。その仕草が可愛すぎて、心停止するかと思った。もしもホストじゃなくても、たとえばカリスマ美容師だとしても、貢ぎたくなる気持ちがよくわかる。

「あっ……いいえ、その、まだカレーの気分じゃなくて」

「そうだよね。カレーは1ヶ月に1度でいいよね」

「(……ですよね)」

史上最強に気持ち悪い女になっている自信がある。言わなければ完全犯罪が完成。

「あの……ごめんなさい……実はあれからカレー、二度作ってですね」

けれども私は犯罪者になりたくないので、正直に告げた。

「は?そうなの?」

「ごめんなさい……!」

サッと鞄で顔を隠してその後ろでペコペコと謝罪していれば「なんで謝んの?」と、桜庭さんはたのしそうにした。

「その……おすそ分けするタイミングが分からなくて。朝タッパーに入れて渡そうと思ったけど、朝渡すと迷惑かな、とか……いろいろ……」

もごもごと言葉を溜めると、桜庭さんの視線がゆらりと宙を漂った。
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