蝶よ花よ、あこがれに恋して


「そうだな、日にちを決めようか」

「えっ?」

「休みだし明日は?あれから二回カレーを挟んだならまだ気分じゃないかな」

困惑した眼差しを向けられ、その悩ましげな表情もポスターにしたいほどかっこいいのは何事か。


「だ、大丈夫です!私、毎日カレーでOKなタイプなので!」


大嘘つき野郎は叫んだ。でもでも、桜庭さんがカレーと言えばさっきまで嫌いになりそうだった牛すじも大歓迎!なお口になってしまうから不思議。

「じゃあ決まり。ちなみに、心鈴ちゃんが作るとこ見ていい」

「……えっ!?見ても、た、楽しくないと、思いますよ」

「ううん、楽しそう。なら買い出しから一緒に行こうか。明後日の15時くらいに出てくる」

「!?」

「明後日の予定は?」

「い、今、出来ました!」

明後日、15時、推しと(食材の)お買い物。

最重要事項のように予定が脳内に刻まれたことを宣言すると、桜庭さんは楽しそうに頬を綻ばせた。

「良い子。じゃあ、おやすみ」

「お、おやすみなさい……!」

ぺこりと会釈をして桜庭さんと別れた。
急いで階段を五階分ダッシュして、冷たいお部屋に入ると明かりを灯した。カーテンをそっと掻き分け、ベランダの向こう側を覗いた。

正面のお部屋の遮られたカーテンからは柔らかな明かりが零れていて、住人の帰宅を教えていた。


「(明後日、たのしみ……!)」


これは、カレーを二巡した私へのご褒美なんでしょうか。うん。そういうことにします。
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