蝶よ花よ、あこがれに恋して

私はあまりに愚かだった。

桜庭さんの家に泊まる、という意味が分からない私じゃない。

触れたい。私の期待に応えてくれたのだと理解していた。

「桜庭さんが、良くなってくれたら嬉しいです」

行為に私の意思も、適応能力も必要ない。だからこそ、ベッドに寝かされた時に私の本心を伝えた。桜庭さんの反応は「そう」だけだったと思う。

「触っていいよ、俺の身体」

Tシャツを脱ぎ捨て、上半身が裸になった彼は、ほら、と私の手を掴んで自分の胸に寄せた。「わ……!」と、おっかなびっくり桜庭さんに触れた。抱きしめられる時とは違う。すべすべで、少し固くて、あたたかくて。

「わ、すごい……桜庭さんだあ……」

「なにそれ」

私の反応にくすくすと笑う彼は「じゃあ、次は俺の番ね」と、躊躇いなく私の胸に触れた。最初はふよふよと表面を撫でるだけの触れ方だったと思う。

だから、甘やかす、という言葉に甘やかされてしまった私は、この期に及んでどうしても、彼本意にことが進むのだと、淡い期待を寄せてしまった。

そんなの、夢物語でしかなくて。桜庭さんは手を緩めるどころかあっさりと私のからだを暴き、くちびるや舌でやわらかくさせ、私の呼吸を浅くさせ、きままに私の酸素を奪った。
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