蝶よ花よ、あこがれに恋して
「そういえば俺、あのあと怒られたんだよね」
桜庭さんが不穏な言葉をきかせたのは、私の部屋の家具に囲まれた桜庭さんを見てもぽわぽわときめかなくなった頃だった。
私服の、指先まで隠れるほどのダボッとしたパーカー姿の桜庭さんがかわいい&かっこよすぎて眼福で。緊張したので何を買ったのか、何を話したか分からないまま買い物が終わり、さらになぜか私の部屋で料理をすることが決定された頃、ようやく私の意識は、ぽわぽわモードから覚醒した。
「俺ん家、炊飯器くらいしか無いから無理」
自炊しないんだ、桜庭さん……!
と、推しのプライベートを覗けたオタク宜しく「分かりました、家にどうぞ」と言ったはいいものの、オフの桜庭さんを5階まで階段で登らせていることに失望し、自費でエレベーターを建設できるのか、その費用を調べるべきだったと嘆いた。
「あの……私、おんぶしましょうか」
「なに急に、罰ゲーム?」
「や、荷物を持たせた上に、階段だし……わたしがおんぶした方がいいかと……」
「悪いけどその説明で、あ、じゃあお願いする、とはならんわ」
「あ、そうですよね、私だと筋肉量が足りませんよね」
「そういう問題じゃないけど。5階まで階段か」
「やっぱり、おんぶしましょうか!!」
「疲れてんのに毎日昇り降りするの大変でしょ。心鈴ちゃん、偉いね」
桜庭さんが褒めてくれたので、明日からも5階分の階段昇降も苦痛じゃなくなった。