蝶よ花よ、あこがれに恋して
「はい。もちろん」
躊躇うことなく桜庭さんの隣に座った。
この三ヶ月の間に、大きなことから些細なことまで沢山経験した。ほとんど毎日を桜庭さんと過ごした。
穏やかな毎日だった。唯一の事件と言えば、試合観戦中の私がSNSで取り沙汰されてしまったことだ。
『これ、胡桃沢さんじゃない?』
相模さんに言われて見せられたのは、SNSのある投稿だった。何万件も拡散された投稿は、PKを祈るように見守る私の姿や、勝った瞬間涙を拭う私で、目にした瞬間『ぅえ!?』と変な声が出てしまった。
絶対に炎上していると肝を冷やせばその逆で。
〈可愛すぎる〉
〈一般人?アイドルの間違いでしょ〉
〈桜庭志邑の彼女らしい〉
もちろん、批判も見受けられたけれど反応の凡そが賞賛なものだった。けれども桜庭さんの名誉のためにも『削除依頼お願いしましょうか!』と、恥ずかしさのあまり、連絡すれば、桜庭さんは『そのままでいいんじゃないの』と楽しそうにしていた。SNSで見かけたそれは、地上波で見掛けることはなかった。
というわけで、職場内にて私の恋人が桜庭志邑だということは、私の意志とは裏腹に一瞬で知れ渡ることとなった。オーナーは『いつか店に招待して』『ついでに行きつけのお店と宣伝して』『バズに乗っかって、胡桃沢さんでも』と言い始めたので、もちろん遠慮した。