蝶よ花よ、あこがれに恋して
簡単な一言なのに、処理能力が追いつかない。
「ぇ、え?」
私の手を握りしめる、桜庭さんの手もまた震えているように感じられた。
今、桜庭さん、なんて……
「もちろん、生活面でもサポートする。金銭面は俺に任せて欲しいって言いたいところだけど、それじゃあ責任感の強い心鈴ちゃんは納得してくれないと思う。だから、これ」
桜庭さんはスマホを片手で操作すると、ある画面を私に見せた。見覚えのない企業のサイトは、スポーツ関連の様々な業務を総合的にマネジメントする会社だった。
アスリートのマネジメント、イベントの企画・運営、スポンサーシップ獲得、メディア対応、マーケティングなど、多岐にわたる業務を行っていると大きく宣伝されている。
その中でも、アスリートのライフプランをサポート、という文言が私の目に飛び込む。
「俺がマネジメント契約している会社。この会社に心鈴ちゃんも栄養士として登録すれば、俺専属の栄養士として一緒に派遣してもらえる。 もちろん今の勤務先の件もあるから、ゆっくり考えて欲しい」
ゆっくり……。
私を安心させるように手を繋ぎ直した桜庭さん。安心が確約されたわけではなく、ソファーから足を下ろし、桜庭さんと同じ目線となる。
「…でも、桜庭さんはすぐにでも移籍するんじゃないですか?」
「……そうだね。こないだ二週間空けた時も、実はドイツへの視察だった」
と、桜庭さんは続けた。