蝶よ花よ、あこがれに恋して
「ちがうんですよ!沢山プレゼントもらってるの見ました!」
オタクとは、自分が大好きな作品や趣味を他の人とも共有したいという欲求がある。共感や理解を得ることで、孤独感を減らし、喜びを倍増させることができるからだ。
「詐欺師じゃなくて?」
しかし、全てにおいて普及活動が成功するとは限らない。
「アイドルです!」
「多分そのうち美顔器とか買わされるんだってそれ」
「買いませんよ!」
「水とか契約するんだよ」
「そんなわけないです」
「胡桃沢、騙されやすそうだからね〜。詐欺師にとっていい獲物だ」
「ちがいます〜!!」
私の言語力では桜庭さんの良さは伝わらなかったばかりか、白瀬さんの中で桜庭さんは詐欺師認定されてしまった。
「(桜庭さんが本当に詐欺師だったらどうしよう……!)」
その日の帰宅、カスハラ対応させたからとオーナーからケーキ(職場の余り物)を貰った私はちょっぴりご機嫌で。お店のショッパーを握りしめ、いつどのタイミングでこのケーキを食べるか妄想しながら、ふと、本当に桜庭さんが詐欺師だった場合の対応を考えた。
とりあえず、財布の紐は強くしなければ。簡単に貢ぐおそれがある。
「サインしてください」
ふと、横切ったコンビニの駐車場で、女の子の声が聞こえた。サイン、というワードに釣られると、そこには桜庭さんに向かってスマホを差し出す女の子がいた。
「ごめんね。そういうのやってないんだ。握手でいい?」
サインの代わりに両手を差し出す桜庭さんにむかって、女の子は「ありがとうございます、応援してます」と、あっさりサインを諦め、桜庭さんの温もりを噛み締めている。
白瀬先輩。
やっぱり、どう考えてもアイドルです。