蝶よ花よ、あこがれに恋して

その様子を見守っていれば、私にきづいたらしい桜庭さんが近寄る。今日も今日とて、素敵だ。

「おつかれ」

「(え、まさか私を待ってた??)」

そんなうぬぼれを抱えながら「今日も一日お疲れ様です。お疲れの私がとっても潤いました」と少し気持ちの悪い挨拶とともに会釈すれば「なにそれ」と、桜庭さんはくしゃっと頬を綻ばせた。かわいい。そんな桜庭さんの微笑みに私のライフは回復し、削られる。

「そうだ。突然だけど、心鈴ちゃんって美顔器使ってる?」

けれども、昼間聞いたばかりの美顔器、というワードにぴくりと反応して後退した。

「か、買いませんよ!?」

「いや購買意欲じゃなくて、持ってるか持ってないかなんだけど」

桜庭さんの眉が困ったように下がるので「持ってません」とすぐに答えた。「そう」と頷くと桜庭さんは紙袋を私に差し出した。

「じゃあこれ、こないだ打ち上げの景品で貰ったんだけど、俺は興味が無いから心鈴ちゃんが使って」

打ち上げ?景品?
ライブの成功を祝って、とかかなあ?

そんな妄想を張り巡らせながら紙袋を覗き見た。箱だけで理解できた。

「!?これ、かなりお高い美顔器ですよ!?」

「じゃあ丁度いいじゃん。使って?」

「い、いただけませんよ!」

「あれから何度か晩御飯作ってもらったし、お礼に。まあ、貰いもんだけど」

貢ぐどころか、貢がれてしまった。

桜庭さんのファンのためにも、桜庭さんの健康を維持しなければと心に誓う。
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