蝶よ花よ、あこがれに恋して

心鈴だって。

──こすず、だって!!

なぞに二度も確認しつつ、しっかりと心臓にトキメキを補充させる。うっかり目眩で倒れそうになったのを倒れてなるものかと堪えた私のオタク魂に感謝する。

「全然活力じゃないみたいだね」

桜庭さんは終始楽しそうにしていた。
彼が喜んでいる姿を見ると嬉しくなる。これも私が、ファンである所以だ。

「いえ、今日仕事で嫌なことがあったから元気が出ました」

「嫌なこと?」

ふと、彼の顔から笑みが消えた。

「あ、別に重大なことじゃなくて。ただ私、緊張すると顔が真っ赤になるんです。赤面症って言うのかなあ……。昔からよく揶揄われていて、今日も似たような経験をしたんです」

「ああ、俺と話す時も大体顔赤いよね」

それは、色んな意味で緊張しているからである。

……というのは内緒にして、うろうろと俯いた。

「あっ、えっと、ごめんなさい……」

もし私が顔を赤くさせていても、桜庭さんは私の事を、一度も揶揄わないところが推しポイントである。

「似たような経験って、何されたの?」

推しに訊ねられ、謝罪よりも説明だと気づかされる。

「たまに来る、大学生くらいの男性のお客さんに揶揄われるんです。今日も無駄にメニューを復唱させられたりして、嫌な気持ちになっちゃいました」
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