蝶よ花よ、あこがれに恋して
──「あ、でもでも、桜庭さんのおかげで元気になりましたよ!?」
眉をひそめて怪訝な顔をする桜庭さんが不安で、あわてて取り繕う。
「……待って。ウェイトレスしてるの?栄養士って言わなかった?」
しかし桜庭さんの疑問は、私の仕事内容だったらしい。
「メニューの改善と考案が主な仕事なんですけど、調理師がすくなければ調理補助もしますし、ウェイターが少なければウェイターもします。健康食レストランなんで、メニューに”栄養士監修“ってプラスしたら、それだけ納得度も増すじゃないですか。さらに私、元々大病院勤務だったので、箔が付くし」
「レシピ考案する方が楽しいんじゃないの?」
桜庭さんの指摘は続く。
……確かに、メニューを考える方がずっと楽しい。
赤面症のことで幼い頃から男子の揶揄いの対象になっていたから、私のコミュ力というか人付き合いは上手なほうではなくて、どちらかと言えば壊滅的。接客業なんて最悪。
「そんなことないです。職場は環境が一番です。円満な職場環境を維持するためには、管轄外の仕事もすべきです」
けれどもこれもまた、いつしか私の本心に変わった。
桜庭さんは私の目を真っ直ぐと見て、それから。
「……!!」
頭の上に重みが乗った。それが桜庭さんの手だと知るのは早くて、さらに、なでなでと優しく頭を撫でられてしまうから、頬に熱が籠るのは致し方ない現象だった。
「俺もいやなことのほうがおおいよ。見返りに対して努力が多い。でも、好きなことを仕事にできた人はそれだけで最強だと思ってるから、今の仕事を誇りに思って欲しい」
桜庭さんが紡ぐ言葉は、私にとって心の栄養だ。