蝶よ花よ、あこがれに恋して



「お姉さん、今日のオススメは?」

「今日のおすすめは……」

次の週、宣言通り来店した先週と同じ大学生らしき男性客二人、プラス一人。増えてしまった。

「(やだなあ、)」

噛まないようにしなきゃ、と思うと噛んじゃって、それを揶揄われてまた赤くなって、悪循環の完成だ。

「お前性格悪すぎ」
「だって、まじ可愛いじゃん〜」
「つか連絡先聞いてみる?」
「いいじゃん。誰が聞く?」
「そこはやっぱ……」

……本当にやめて欲しい……。

男性客の会話にうんざりしながら、キッチンへ向かう。そしてやっぱりこういう時に限って相模さんは不在だし、オーナーは人の少ない時間なので休憩中だ。

「またあいつら?私代わろうか」
「大丈夫です。白瀬さん、お仕事あるじゃないですか」
「んん〜……!オーナー呼ぼう!オーナー!」

白瀬さんはそう言って厨房へと戻った。私は、テイクアウトのケーキ類が並ぶカウンターにて今日何度目かのやだなあ、を押し殺していると「すみません〜」と店員を呼ぶ声が聞こえた。憂鬱だ。

「お待たせしました。お決まりでしょうか」

「お姉さん、彼氏いるんですか」

「(注文してよー……!)」

とってもとっても言いたい本音をぎゅっと喉の奥に仕舞って、笑顔で「……いません」と答えていると不意に来店のベルが鳴った。「いらっしゃいませ〜お好きな席へどうぞ」と、他のスタッフの案内が聞こえる。

「じゃあ連絡先教えてよ〜」

言いたいことをグッと堪えて、困ります、と言おうとした。


「駄目です」


けれども、我慢よりも先に聞きなれた声が落っこちて、振り向いた私はぱちくりと瞬きした。
< 26 / 137 >

この作品をシェア

pagetop