蝶よ花よ、あこがれに恋して
しばらくすると出勤の時間になって、いつもの場所で桜庭さんと出会う。今日も普段着の桜庭さんは、レッスンで使用する道具が入っているのか大きなバッグを肩から掛けていた。
「おはようございます、桜庭さん」
「おはよう。さっき急に消えたけど、どうしたの」
「桜庭さんが尊すぎて倒れてました」
「眠たいだけじゃないの」
「ちがいます!あ、でも昨日桜庭さんが出演するCMが流れないかなって遅くまで起きてたので、寝不足と言えば寝不足です」
「流石に昨日の今日で放送されないんじゃないの」
「……あ!そっか……桜庭さんなら未編集でもライブ配信でも放送可能な気がしますけどね」
「まあ、普段はそんな感じだけどCMでライブ映像は無理だろ」
そっか、生放送の歌番組とかライブ配信で慣れてるんだ……!
桜庭さんのインライ、私も参加したい!あわよくば投げ銭したい!
「あの、桜庭さ……」
と、SNSの有無を聞こうとして、脳内でイブが『貢ぐな』と囁いたので、言いかけた言葉を飲み込んだ。
「ん、なに?」
朝から聞くには重たすぎな、甘い声が落ちる。
「て……テレビで桜庭さんをなかなかみかけなくて」
「出る日と放送局教えようか?」
「いえ、それはなんというか、ズルしているようなので遠慮します」
聞けばいいのに、変に真面目な性格が邪魔をした。
「いつでも教えるから言って」
桜庭さんのファンサは未だに継続中らしい。