蝶よ花よ、あこがれに恋して
かくして、私は自分のお部屋で正座をしていた。
《今日、ビデオ通話していいですか》
無視される覚悟でメッセージを送ると、15分程度経過したのち返事が届いた。
《30分後ならいいよ》
おっけーをもらってしまったのだ。
こうなってしまえば、大変だった。30分間、逸る心臓を抑えたり、何を話そうか話題に困ったり、浮腫んでいないかとか、化粧直しをしてみたり、もう、大変だった。
そんなふうに忙しなく30分は過ぎて、5分前から正座している。そして困った。私から掛けるべきか、それとも桜庭さんの着信を待つか、確認すべきだった。段取りが悪い。今後の改善点である。
そんな矢先、ドキン!と心臓が高鳴った。桜庭さんからの着信が入ったのだ。
記念すべき初のビデオ通話。桜庭さん♡の文字をスクリーンショットに収めて、それから緑にむかって人差し指をスライドさせた。
画面に桜庭さん(かっこいい)(すごくかっこいい)(美術館に飾られるべき)が現れて、わたしの瞳にハートが灯された。
「桜庭さん、こんばんは」
「こんばんは」
地方公演中はホテル暮らしなのだろうか、背景にベッドが見えて、ちょっとドキッとして、頬に熱が通った。