蝶よ花よ、あこがれに恋して
困った。聞きたいことは心の中の質問ボックスにしまっていたはずなのにどこかへ置き忘れたのか、見当たらない。
「お疲れさまです。えっと、今日はどうでしたか?ファンサ、しました?」
だから、ふたりで練習したファンサをなぞると「ファンサ?」と、桜庭さんは首を傾げた。
「出待ち対応はしたよ」
「出待ち……!さすがですね」
「そうでもないよ」
私を含め、出待ちされる人生を送らない人間がほとんどなのに、控えめだ……!!
「ねえ、今日いつも以上に顔が赤いけど、どうした?」
画面の向こう側で桜庭さんが首を傾げるように覗き込む。可愛い。あやうく見蕩れそうになる。
「……!あ、ご、ごめんなさい!」
「お酒飲んだ?」
「実は飲みました!どうして分かったんですか?」
「いつもより可愛いから」
「えっ」
危険だ。気を抜くと、桜庭さんは私の息の根を止めにかかるので非常に危険だ。
「誰と飲んだの?職場の人?」
「いえ、イブっていう幼なじみです」
「幼なじみ?」
桜庭さんは興味を示すけれど、イブのことを話しても全く話が広がらないばかりか、桜庭さんにとって無駄な知識になると思うので「桜庭さんには幼なじみ、いますか?」と、質問で返事をした。
「幼なじみっていうか、腐れ縁ならいる。中学から一緒で、今はお互い、仕事で忙しくしているけれど、休みが合えば飲みに行くような、そんな腐れ縁」
「素敵ですね」
「今になれば貴重だよね」
「わかります」
桜庭さんが言うので、今日からイブは、貴重な存在に格上げである。