蝶よ花よ、あこがれに恋して


幼なじみを貴重だと話した桜庭さんは、ふと、どことなく、悲しそうな目をした。いつもそう。桜庭さんは聞けば教えてくれるけれど、もう、踏み込んではいけないような、そんな目をする。だからわたしは口を慎む。

「……そういえば、ご褒美は考えた?」

すると甘やかな微笑みとともに、約束を想起させられる。

「それは……」

考えてません。というか、考えられません。

「早く決めてよ。じゃないと俺、もうすぐ帰ってくるよ?」

答えの出ない私を見て、桜庭さんは楽しそうにする。正座した太ももの上で指を丸めた。

「ご……ご褒美のことを考えようとすると胸がいっぱいになって、それだけでご褒美なんです……だから、保留にしてください……」

考えるだけでなんだか胸が火照った気持ちに陥って、夜も眠れないし、仕事中であればふわふわとした夢心地になってしまうので、考えないようにしている。

「……本当に言ってる?」

桜庭さんは疑惑の目を向ける。

「ほ、本当です……!」

「ふー…ん」

ああ、信用されていない……!
どう伝えたら良いか、考えるだけで胸が踊るこの感情を……!!

「ほら、修学旅行やお祭りの前って、当日を考えるだけで楽しいじゃないですか。ずっとその気持ちを味わっている感覚なんですよ」

「お祭りって、大袈裟」

「す、すみません……!」

「心鈴ちゃんは、あまやかし甲斐がないな」

画面の向こう側で桜庭さんが微笑むのを見た。
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