蝶よ花よ、あこがれに恋して

「(ずるい……)」

桜庭さんはいつもずるい。
そんなふうに言われたら、私は、頷くしかない。

「……わ、わかりました……ありがたく頂戴します……」

スマホの前でなぞに土下座をする。

自惚れてしまいそうだ。
でも、ここでわたしが自惚れてしまったら、桜庭さんが寄せてくれた信頼を裏切ることになる。

これは報酬。報酬をもらうためには、しっかり成果を残さねばならない。期待に応えないといけない。

「(ゆるむな、ほほ……!)」

けれども、くちびるをどれだけしっかりと結んでもゆるゆると解けてしまうのも致し方ないことだ。

桜庭さんは、こんな風に、誰にでも分け隔てなく期待を持たせる人だとは思いたくないからだ。


《今日の》


ビデオ通話が終わると、桜庭さんから、一枚の写真つきのメッセージが届いた。
今日の、に続く言葉は、きょうのお仕事、かな?

芝生を背景にスタジアムの、関係者席らしき客席に立つ桜庭さんはユニフォーム姿だった。鮮やかな青色のユニフォームは、色白の桜庭さんの良さを引き立てていて、もう、たまらない。

メンカラ、完全に青……!!!

もしかして今日はサッカーの試合の前にパフォーマンスをしたのかな?

こうして見ると、サッカー選手みたいだなあ、と思いながら、その写真を目の裏にやきつける。

もしも試合の前座でライブがあれば、試合よりも桜庭さんたちのステージで完全燃焼しそうだなあなんて思いながら。
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